やはり田舎町の光景が記憶に残る。露店のビリヤード場、自らも豚みたいなお母さん、ゴミ捨て場で分別作業するお父さん、泥だらけの農作業。海賊版DVDつくっている、すぐいなくなる彼氏。公務員の男の記念撮影でロンドンバックにただ一度だけ笑う主人公。ここでコメディでもあると示しているのが周到。

そして重慶のものすごいタワマン群。馘になる縫製工場（友達はそのまま残ったのだろう）、血を売って暮らす男。ベッドに隠された札束は渡航資金になったのか。医学部での講義のために裸になり臓器の画を体躯に描かれるショットが深く記憶に残る。元数学教師の老人との結婚。ムスリムのインド人の子供。

中国の内にも外にも碌なものを見出せない彼女。どこかでハッピーエンドにしてもいいのに、徹底して男運のない女であった。昔はこのように旅するのは男、港々に女あり、だったものだが、当世風は逆なのだなあと思った。ラストの港の光景は冒頭のショットに戻る。曲はFeistのLonely Lonely。歌詞にも字幕入れてほしかった。