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[コメント] 暁の追跡(1950/日)

警察の民主化の主題は浮上した途端に霧消してしまう。不満だ。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「わざわざ殴られに行く」デモにトラックに乗って大量動員される警官たち。捕まえられたのはヤクザだからデモつぶしを防いだとも取れるのだが、デモを邪魔する警官とは何なんだと池辺良は屋上で悩む。警官を辞めようと別の仕事を探す。この件は民主警察の草創期の悩みを真摯に捉えている。いい映画ではないかと観ていると、何とこのテーマは霧消してしまうのだ。

なんとかならんかったのか。こういう真摯な問いを放棄した先に、昨今の民主デモを体当たりで潰そうとする警官、「月刊BAN!」みたいなヘイト思想の専門誌を読む警官が存在し、我々は迷惑しているのだ。国家地方警察本部後援作。市川崑は本作に関連したインタヴューで私は警察好きなどと答えているから、そんな気はなかったのだろう。

そして映画は凡々たる悪党の追跡劇で終わる。タイトル通りの追跡もスケール感なくショボい。いいのは高堂杉葉子のやけに明るいラーメン屋の父娘とか、伊藤雄之助の早速のフューチャーで、市川崑の漫画チックに軽快なタッチが始まっているのを確認はできる。この新橋の交番は『風流交番日記』(55)でも利用されている。

(評価:★2)

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