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[コメント] 花つみ日記(1939/日)

新しい土地と珍しい仕事、新しい友達との出会いと別れ。吉屋信子らしい少女小説の世界で、大林宜彦は多くを引き継いでいるだろう。しばしばシュールな撮影も大林の先駆を思わせる。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







民三作品は構図、キャメラワーク、リズムのいい編集と、いつも抜群だ。冒頭の影を強調した校庭の掃き掃除からまず素晴らしい。セーラー服に鍔付き帽の集団が麗しく、憂鬱な後半に冬服になるもの周到。先生の授業の物真似が合唱に至り、習うより慣れろの教育方針が浮上したりする。表札にたどり着くバスの車窓が愉しい。

先生の家の前で喧嘩別れする際のシュールな味のあるショットも印象に残る。話はふたりの絶交の原因をどうでもいいものとしている。どちらが犯人か、実際どうでもいいことなのだった。学校辞めて芸子になるなど当たり前の時代、凸ちゃんも学校に行けなかった。別経路でふたりが同じ歌を歌っているのが寂しい。凸ちゃんの雨中の千人針、路上に弾ける雨と行き交う下駄。映画は時代の影をどっぷりと背負っていた。

(評価:★4)

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