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[コメント] 孔雀 我が家の風景(2005/中国)

物語はディケンズの小説の、産業革命時の悲惨なエピソードのようだ。文革後、工業化へ向かう中国にも同じような閉塞感があったのだろうか。チャン・ジンチューはこんなのイヤだと心の中で叫び続けるが、何がどうイヤなのか説明できないでいる。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







工業化はイヤだと個人レベルで叫んでも仕方がない訳で、説明できないから、彼女の最後の涙は客観的相関物を欠いていてひどく抽象的で、表に現すには多淫という形を取らざるを得なかったのだと思う。

工場での空瓶洗浄での同僚への鈍感な対応、「ペテン師」の件(兄への弟の態度は、鶏が三度鳴くまでに、というペテロの逸話が想起される)など、閉塞感が蔓延している。軍隊への入隊が閉塞感からの風穴とされているのも、他国が辿ったのと同じ道だ(『生まれてはみたけれど』はそのような結末だった)。石造りの家並みも、兄夫婦への優しい収束も、ディケンズを連想させる。

全編いいキャメラ。パラシュートと自転車の件は宮崎駿に負けているが、宮崎のような縦の構図を使わないのが閉塞感の表現と云うべきなのだろう。

(評価:★5)

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