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[コメント] 昼下りの決斗(1962/米)

老人と云ってもジョエル・マクリーまだ57歳。「誰が自分の葬式に来るかなんて気にしないよ」という科白が心に残る。私の葬式は誰が来るだろうと振り返る縁(よすが)になった。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







N・B・ストーンJr.という脚本家のキャリアは本作だけの由。青二才ロン・スターを老人ふたりが嬲って揶揄いながら進める作劇は、若者を導く老人という古典的な物語の尻尾が残っていていかにも西部劇で古臭い。裏切ったり合流したりするランドルフ・スコットの造形にも、もうひとつの必然性と魅力が感じられない。ただ、突然ドライになるラストはいいものだった。死にゆくマクリーを放置して去る、助ける振りなんて御免だね、というものかと受け取った。

舞台のシエラ山脈(ハイ・シェラ)は原題通りのHigh Country。カラーで撮られた背景の岩山が格好よく、金山のテント村の再現が感じいいが、そこから先はハモンド兄弟のドロドロの展開。あらかじめ原始共産制と匂わされた娼館での結婚式(『荒野のガンマン』の教会に早変わりするバーが想起される)。

強調される赤いペンキの壁、ディヴァインみたいな姐ちゃん、アル中の判事(牧師のいない結婚式を「民事婚」と呼んでいる)、とっかえひっかえのダンスにキスハグ、別室のベッドに突き倒される世間知らずの真白なウェデイングドレスのマリエット・ハートレイの受難。実にペキンパーらしい餓鬼道描写で傑作『わらの犬』が想起される。ハートレイの父の牧師R・G・アームストロングは娘の婚約者にあの与太者を選んで、最期は彼等に殺される。この曰くありげな牧師はもう少し観たかった。ここが本作の見せ場だったが、加害と被害が単線的で、酷い目に合ったという以上のものがなかった。

冒頭の主演たちの再会の舞台が中華料理屋なのが興味を引く。丸テーブルが並び、店主は丸帽子かぶった中国人。「山にゴミ捨てるな」とロン・スターに怒鳴る環境派のジョエル・マクリーは好感。ペキンパーは本作撮影中に、厳格な山男(製材所所有)だった父親を亡くしている。再見。

(評価:★3)

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