コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ひかげの娘(1957/日)

新藤手役の置屋ものだが美点がふたつ。ひとつは連綿と描かれる帳場仕事の詳述。繰り返される玄関での出迎えが映画のリズムを刻んでいて実に心地よいい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







香川京子の繰り返される電話応対がまたリズミカルでいい。ただのダレ場を見処にするのだから上手いものだ。「麻雀できる人ふたり寄越して頂戴」みたいな穿った応対も単純に面白い。

もうひとつはラスト。物語は香川の(千秋実を除いて)4人の男の選別作業という処に後半絞られる。中村伸郎が脱落し、伊藤久哉が脱落する。最初から嫌味なキャラの伊藤など脱落するのが判っているから山中湖一泊の件など引っ張るものがなくダレダレであるが、さて残るは貧乏学生で理想論者の仲代達矢と同級生で純朴な勤め人の佐原健二(香川が彼と話すときだけ生き生きとしているという造形はとても感じいい)。どうなるでしょうという処でなんと映画はザックリ終わる。

観客に選ばせる、ということなのだろう。これは意欲的な切り口と思う。ただ、仲代にしても佐原にしても情報量が少なくて、選べと云われても困ってしまうのが難点。「私の汚い血が」というドギツイ表現が、喋るのがあの香川ということもありインパクトがあるが、総体に当たり前で淡泊。新藤は置屋もの書き過ぎだと思う。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。