コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 虹をわたって(1972/日)

処は横浜元町、河口に延々続くだるま船の縦列駐車(三重)はセットで組める規模ではなく、当然ロケなんだろうが、本当に水上生活者が住んでいたのだろうか。『泥の河』の加賀まりこのような。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







失われた昭和の風景を記録して箆棒の感想が残る。ゴミの浮かんだ河、植木鉢がそこここに置かれただるま船、蓮花荘なる宿屋、港湾労働者への弁当配り、水神さまと祈られる武智ほかのダンスはホンマものなんだろうか、フォークロアそのものという異様な感動があった。

森崎がなくなったとき、森崎も前田も庶民を描いたのではなく庶民からアブレた人たちを描いたのだとの評があった(山田洋次は微妙に違う)。本作などその通りの作品だった。俺たちにいい生活は無理だとモデルハウスを破壊してしまう水上生活者たちには、いずれ消え去る運命が見える。山の手の実家まで天地真理をおぶって歩く継母日色ともゑの貧困脱出の告白は、だるま船群と高級住宅街を繋ぐ唯一のものだった(高低差の描写が自覚的だ)。いろいろあった天地に終盤愉しかったねと天然で回想させるラストは、両者の断絶を感じさせる諦念に満ちたものだ。

全体引っ張るなべおさみの喜劇はイヤミなく、岸部シローの占いで物語展開するのもいい手法。沢田研二の長い船上弾き語りは無用だが事務所の力関係と思われ、このとき彼が弾くフェンダーのアコギは珍品だろう。私的ベストショットは白雪姫の舞台における武智豊子の妖怪婆さん。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。