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[コメント] 仮面の米国(1932/米)

脱獄中の原作者と接触して制作された、という経緯を知るとさらに愉しめる残酷監獄告発物語。あのときワーナーはまだ若かった。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







一番腹立ったのは「脂とゴミとクズ肉とトウモロコシ」の食事。刑期をダシに取引するのもひどい。この時代に黒人に科白があるのも、それほどのどん底描写ということなのだろう。ジャン=バルジャンみたいに橋を作っていた者がラストで橋を爆破するイロニーが何とも云えない。

映画としても優れている。本作の白眉は脱走シーン。汽笛のような警報や犬の鳴き声の騒音が水中の無音に消される音声処理の見事さ。直後の逃亡も今や定跡となった優れものの描写の連発。見つかったと思ったら反対側を逃げていく奴を警官が追っていたとか、こちらを見ながら曰くありげに囁き合う駅員の醸し出す不安とか。

ただ、軍隊帰りで地道な事務仕事が厭になり駆け巡るアメリカ大陸、という導入はどうでも良かったように思われる。いきなり相棒が拳銃出して「お前は金庫から金取れ」と云われて捕まって懲役10年、という酷い運命は、刑務所というより裁判を何とかすべきだと思う。エドワード・エリスの老人が印象的。ポール・ムニはST先輩に激似。

(評価:★4)

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