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[コメント] ナイトメア・アリー(2021/米)

ファンタジーな世界観作りはさすがの一言。ただ、寓話的なメッセージとしてはちょっと冗漫かな。
deenity

**ネタバレ注意**
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アカデミー賞が先日発表がありましたね。個人的には望み薄ではあろうとやはり『ドライブ・マイ・カー』に期待していた部分はありますが、妥当な受賞だったかと思います。 そして本作はそんな作品賞にノミネートされていた作品ですね。同じく『シェイプ・オブ・ウォーター』で作品賞受賞経験のあるデルトロ監督の新作です。

デルトロ監督の作品といえばファンタジー性豊かな寓話的作品のイメージが強いのですが、本作はどちらかと言うと人間にスポットの当たった作品でしたね。 とはいえ世界観の作り方はさすがでしたね。全体の色みも相まってダークな世界観が絶妙でしたし、見世物小屋って設定がそう活きて来るのかというラストにはゾクッと来ましたが、とにかく作品全体のノワール感がらしさを感じました。

あとは個人的にはデルトロ監督の寓話性ってすごく好きなんですけど、結構内容的にはあっさりシンプルってことが多いんですよね。 本作もメッセージ的には寓話的でありながらも、実はすごく王道なストーリーにデルトロ的脚色を施した作品って感じなので、内容的な深みというよりはシンプルな寓話として見るとちょうどいいのではと思います。

やっぱりラストシーンがとにかく良かったんですよね。見世物小屋という設定から本筋が一度外れていくのですが、そういうフリークス的な扱いを受けていた人権侵害を謳った社会派映画に思わせて、実は教訓めいた作品だったというオチ。しかも主人公スタンを演じたブラッドリー・クーパーのあの乾いた笑い。最高でしたね。 獣人として蔑んでいた立場に気づくと自分が立たされていたと気づく。人として大切なものを失っていき、その尊厳もなくした末にたどり着く結末が不意に来る円環構造は見事だった思います。

ただね、長いのよ。最初にも述べたけど作り自体はシンプルなのでメッセージとしては掴みやすくて、ある程度の流れさえ見えてこれば難しいことはないんですよね。 ただ、その流れに乗るまでもちょっと長いんですよね。ルーニー・マーラと駆け落ちしていく辺りからようやく見えてきたかなって感じだったので、もう少しコンパクトにまとめてもらえると良かったかなと。

世界観的には素晴らしくて、そりゃ美術賞とか衣装デザイン賞とかが評価されるのも納得なんですけど、深みというよりは単純明快な寓話としてもう少しまとまりがよかった方がいい気はしました。

(評価:★3)

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