スパイアクションという割には、斬新なアクション性やスリル感にとぼしい単なるジェットコースタームービーという散漫な印象であった。上手くできている風でありながら、内容についてはプロットの運命論的な動機付けや人物造形の滋味を抽出する視点など掘り下げ方が足りなかったのではという疑問が残る。原作者である監督のフィリップ・ハイムであるが、シナリオ監修にイスラム学者や元・諜報部員などを迎え、4年の歳月をかけて徹底的に細部を検証しこのスパイアクションに取り組んだとのこと。しかしそうした苦労を映画にはめこむことだけに終わったという感が否めない残念な結果である。スパイアクションという題材であるならばもっと徹底的なエンターテイメントテリングを期待したいし、テロの脅威を描くのであれば、画面に更なる凄み、怖さが必要であった。