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[コメント] ソーシャル・ネットワーク(2010/米)

フィンチャー監督が対象に接しきれていない不完全燃焼なSO-SOムービー
junojuna

ドラマ制作の発端は“フェイスブックという巨大コミュニティの創設者であり今や億万長者となったマーク・ザッカーバーグが、その地位と名声を手に入れるために友情を失った”という半ばゴシップ記事に近いハイコンセプトの着想だろう。しかし、蓋を開けてみればデヴィッド・フィンチャーはこの劇的なモチーフを料理しきれなかった。結果、物語を追うことで精一杯だったのだ。この物語は“なぜそうなったのか”を解き明かす心理ドラマである。時間構成を綾に織り込みながら、人物間の交わりの推移を着地に向かって展開していく。ドラマの焦点となるのは主人公マークとそのマークを訴えるエドゥアルドの関係性であるが、フィンチャーはこの人間関係にはさしての興味を示さない。そこに友情や嫉妬や、人間の闇の部分を連想させる感情を描こうとしない。その視点はあくまで遠巻きで、突き放した冷静さを感じさせる。しかし、そのスタンスは果たして正しかったのか?確かに、この事実を題材とした物語および実名で登場する彼ら人物たちの誰かに肩入れする必要はないだろう。しかし、そこに感情を想起させる視点、登場人物たちの念を感じさせる人間心理への冷徹なまなざしが施されなければドラマとはならないだろう。もうひとつの訴訟である双子たちのドラマは割愛すべきだった。あのドラマがあったために本作はタガが外れてしまった。残念にも作家の意図が不可解なため、デフォルメがあったにせよ、この劇的なモチーフからはニュース映画以上のものは生まれなかった。フィンチャーは前作『ベンジャミン・バトン』然り、映画のモチーフは最高級にいいのだが、その出来上がった料理に満足度が低い。次回の挽回を期待する。

(評価:★3)

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