[コメント] アリス・イン・ワンダーランド(2010/米)
これまたエキセントリックなキャラクター造形でフィギュアコレクションも鰻上りとなるであろうこと請け合いのジョニー・デップを万全な状態で用意して、そのフェティッシュなヴィジュアル造形がティム・バートン印の現れを訴えて、われわれが期待する魅惑的なおぞましさを大いに満足させた彼のダーク・ファンタジーである。「彼のダーク・ファンタジー」と語る時、そこにはもはや、作品の良し悪しだけではないブランドの力というものが誇示されている。ジョニデのマッド・ハッター、ヘレナ・ボナム・カーターの赤の女王、チビデブの双子の兄弟だ。そのフリークス造形への執着は、映画が見世物であることの強権発動である。特にヘレナの赤の女王による「表情」だけで唸らせる演技の賜物は驚愕の仕上がりである。俳優の技量の凄さを訴える素晴らしい仕事であった。映画の見せ方を心得たティム・バートンには、作品の完成度などほとんど適当な思われであるにすぎない。またどんなに天真爛漫なファンタジーという舞台設定も、彼にとってはあくまで素材なのだ。今作も、作品の風合いでいえば前作『チャーリーとチョコレート工場』と並ぶラインナップシリーズといった趣だ。新鮮な趣向は特段に見当たらないし、物語も先立つ世界観をその映画想像力で豊かに解釈したようなところはひとつも見当たらない。やはり、本作の魅力、ティム・バートンの魅力はビジュアリストとしてのフェティッシュなイメージ造形の強度にある。よほどのヘンタイでなければこうはならないだろう。だがしかし興奮の一閃である。しばらく、このラインナップシリーズ街道をまっしぐらと行って欲しい。このアリスで半分以上やってのけたのだ、どうだろう、次作はトッド・ブラウニングの『フリークス』のリメイクというのは。
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