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[コメント] コナン・ザ・グレート(1982/米)

キング・オブ・ザ・バーバリアン
山ちゃん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 今でこそ、シュワルツェネッガー主演作品であれば、シュワに台詞なくとも作品自体にストーリーなくとも、この男に武器を与え、好きなように暴れさせておけば面白い作品が出来上がることは、その後の彼の作品で証明されてきている。ところが、本作「コナン・ザ・グレート」は当時無名のシュワ−すなわち演技力ゼロのそこらのボディビルダー−を、初めて主役に据えたエポックミーキングな大作である。筋肉隆々としたガチムチ戦士コナンを演じるに、シュワの肉体は申し分はない。しかしながら、この何を考えているかよくわからない筋肉の塊のようなこの男を主役に据え大丈夫かという不安もよぎる。

 それ故に、このガチムチマッチョは、本作において、始終ふんどし一丁の格好で肉体美を存分にアピールし、外面的には優れたコナンを演じてはいるものの、内面的には全く演じ切れていない。コナンは、家族を皆殺しにされ、奴隷として強制労働させられるという過酷な境遇を背負ってきたのである。それにもかかわらず、シュワルツェネガーからそのような悲壮感が全く感じられない。また、奴隷時代には、敵を攻め滅ぼし女の悲鳴を聞く時が最上の時と言っていたコナンが、自由の身を得て、旅の途中で最愛の恋人を得、復讐を成し遂げ、最後には民衆に敬われる一国の王となるのである。その過程において内面的な心情変化があってもよいはずである。それにもかかわらず、そのような変化がシュワルツェネガーから全く伝わってこない。また、連れ添ってきた最愛の女の死に対しても涙を流さず(キンメル人は泣かないという強引な(?)設定で代わりに仲間が泣く)、最後のタロサの巧妙な術中にもはまっているのか何なのかよくわからない不格好な表情を見せる。台詞もなく、終始無表情で何を考えているかよくわからず、それでいて、神に威圧的であり、女と絡みのシーンでは、異常な人並み外れた性欲向き出しの恰好(本性)を露わにし、戦闘シーンでは敵を豪快に殺戮マシーンの如くぶった切る。コナンは、後に民衆から敬われる偉大なる(グレート)な王となるそうだが、これではただのバーバリアンにしか見えない。

 とはいうものの、私はこのシュワ扮するバーバリアンなコナンの方が、グレート(であったはずの)コナンよりも好きである。豪快な笑いから魅せる、悲しい生い立ちもブッ飛ばすかのような陽気さ。女と絡むときの異常な性欲丸出しの恰好から魅せる野性本能の剥き出し。そして、武器を持たせた時の彼の豪快主義は爽快感を呼ぶ。終始無表情ではあるが、たまに、剣を振り回す時等にニヤリ顔も見せており、愛嬌もある。そしてラストの王として椅子に腰かけるさまにならない格好。その不格好な姿からも彼がグレートではなくバーバリアンであることが明らかである。もっというと、彼は、誰にもたどり着けないほどのバーバリアンの素質を持っている。バーバリアンの魅力を存分に発揮している。彼こそまさにバーバリアンの中のバーバリアンである。おそらく100年に1人出るかどうかの逸材であろう。キングオブザバーバリアンである。

※余談ではあるが、本作において、私は、冒頭の強制労働場でシュワが、謎の円柱をぐるぐる回すシーンや、幾人もの男女がほぼ全裸の恰好で快楽に耽っている場でマッチョが謎の緑の液体をぐつぐつと煮込んでいるシーン等こういうマッチョが謎めいた行為をしているシーンもよくわからないが好きな(というか興味深い)ところである。

(評価:★4)

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