[コメント] チェンジリング(2008/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
映画ではウォルター少年が殺害されたかどうか明らかにされていない。
ラストで逃げ帰った少年の証言により、ウォルター少年も脱走に成功したかのように思える。
また、母親がいまだに息子を探していると知ったゴードンは、死刑の直前にウォルター殺害について話すとクリスティンを呼ぶが、いざ面会になると話すことを拒否する。「嘘をつくと地獄に落ちるからだ。地獄に落ちたくない」と言う。
ということは、「殺したと話す」=「嘘だから地獄に落ちてしまう」と読み取れる。つまり殺していないということだ。
あくまでもウォルター少年は生きているかもしれないと思わせる内容になっている。
ラストではクリスティンが生涯ウォルターを探し続けたとのテロップがでる。観客は強い母の愛と、かすかな希望を感じつつ、映画の余韻に浸ることができる。
しかし、実際の事件で逮捕されたゴードン・ノースコットは、ウォルター少年の殺害を認めている。しかも、90人以上の少年を誘拐し、性的な暴行をした後に殺害したと証言している。
さらに少年たちを、同じような嗜好を持つ人間に貸し出してもいたらしい。
少年に対する性的暴行は微妙な問題なので、映画でははっきりさせなかったのかもしれない。
そういった事実を隠しつつ、映画として成り立たせているわけだ。
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民主化、近代化というのは権力を大衆に移譲し、強い権力を持つ者を消すことであった。警察に従わないものを精神病棟に強制収容する警部は、まるで絶対王政期の権力者のようだ。そういった権力を、一市民とマスコミの力で突き崩していった過程には一見の価値がある。
絶対的な権力に対する抵抗と憎悪、これがこの映画の肝であるような気がする。
いろいろな要素が絡まって、クリスティンは社会を変えることができた。その陰には権力の犠牲になった多くの人間がいたことだろう。これが実話だというところがこの映画に畏敬の念を感じさせる。
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