そのような次第で、全般的に宿の外で撮られたシーンがよい。映画における面白さを創出することにかけて「自転車」はラッキーアイテムだが、しかしそれゆえ自転車シーンは下手に撮ってしまえば観客からのブーイングも避けられない。ここには染谷将太から南果歩への自転車バトンタッチ、そして慣習に逆らって南を漕ぎ手にした南＆松重豊の男女逆転二人乗りという素敵なシーンがある。それぞれの作中人物の人生が交錯し、それぞれがそれなりの着地点に落ち着いて終結する群像劇ではあるが、すべてはただ南と松重が二人乗りに至るべく段取られた物語に過ぎないと思えば、どうも感動的な映画である。

　椅子に縛りつけられてドライバーショットを打ちっ放される忍成修吾はピッチングマシーンで屠られる『アウトレイジ　ビヨンド』の加瀬亮に、宿の浴室で不貞行為に及ぶ女刑事河井青葉は『恋の罪』の水野美紀に酷似しますね。