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[コメント] がんばれ!ベアーズ 特訓中(1977/米)

正篇『がんばれ!ベアーズ』原理主義者の評判はよろしくないのかもしれぬが、正統の続篇でなく派生作とでも思っておけば腹も立たないだろう。しかし、そもそも、これだけ子供らが好き勝手に躍動した映画が平凡以下の喜劇であるはずがない。前作から引き続いての出演者を筆頭に最高級の子役を揃えている。
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映画の笑いに関して云えば、テイタム・オニールの降板はいささかも悪影響をもたらしていない。それよりも肥満体の捕手マイク・エンゲルバーグ役の交替のほうを嘆くべきだろう。よく雰囲気の似通った子役を連れてきているが、傲岸不遜なキャラクタ性はかなりの程度で失われてしまっており、クリス・バーンズ演じる人一倍鼻っ柱の強い遊撃手タナー・ボイルとともにチームを推進する役割は果たせないでいる。

そう、ここで是非とも云っておかなくてはならないのは、ベアーズの中心、少なくともチームの感情の中心はアマンダでもケリーでもなく、このタナー少年にほかならないということだ。彼と、前作で彼がいじめていた少年ティミー・ルーパス(愛称ルーパー。演ずるのはクイン・スミス)との友情の在りようが、この映画を凡作から決定的に遠ざけている。骨折してチームに帯同できないルーパスを見舞いに行き、一緒に日本遠征に行くことを約束する光景の少年らしい美しさを、どうして『がんばれ!ベアーズ』ファンが心穏やかに眺めていることができるだろうか。さらに試合会場へ向かう途上に宿泊したモテルで、皆が寝静まった後もタナーはテレビで映画(『Knute Rockne All American』というアメフット映画らしい)に見入っている。このシーンの情感も決してただごとではないのだが、その作中の“Win just one for the Gipper”という台詞に感銘を受けた彼は、試合直前のミーティングで“Win just one for the Looper”とチームを鼓舞するのだ。

また、現在もバイプレイヤーとして活躍中のジャッキー・アール・ヘイリー扮するケリー・リークが父親に抱く複雑な思慕も大きく取り上げられている。これはちょうど『がんばれ!ベアーズ』におけるオニールとウォルター・マッソーの関係に対応するもので、このように残留選手と新戦力の補強によって前作にも負けない映画作りを目指した采配は至るところに認められる。

アリスの恋』にもエレン・バースティンの息子役として出演した天才子役アルフレッド・ルッターが、主にスコアラーを務める眼鏡の補欠選手アルフレッド・オギルビー役を前作に引き続き巧みに演じているというのも嬉しいところだ。眼鏡と云えば控えの投手ルディ・スタイン役のデヴィッド・ポロックも「演技力」という物差しでは測れない絶妙の雰囲気を持っている。チームの練習中にひとりだけ我関せずとばかりにベンチに寝転がるシーンなんて面白すぎる。

(評価:★4)

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