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[コメント] ミツバチの羽音と地球の回転(2010/日)

理がどちらにあるのかは今や明白である、という主張を映画らしい方法で裏付けているのは海上の作業船と埠頭の反対派住民が対峙するシーンだ。物理的距離を隔てた対決の構図をよく撮り収めたカットがないのは手落ちだが、反対派若手リーダの本気顔がいい。映画においては「顔」こそが最大の説得力を持つ。
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反原発の態度は鮮明だが、ともすれば東京電力福島第一原子力発電所の事故後の観客にとっての最も大きな関心に応えるドキュメンタリではないかもしれない。むろんそれはこの映画の責任ではなく、またこの映画が提出する視点の重要性を削ぐものでもない。

原子力発電と化石燃料への依存から持続・再生可能なエネルギーに転換すること。なるほどそれが進むべき道であるとして、この国でそれを阻んでいるものとは何なのか。国なり自治体なり電力会社なりが絡んだ利権構造がそうだと人は云うのかもしれないが、次なるドキュメンタリにはそれを暴くことを期待したい。と云った舌の根も乾かぬうちに付け加えておかなくてはならないのは、「期待したい」などという他人任せの態度を改めぬまま自らを第三者の立場に置こうとする観客もまた、この映画にとっての批判対象であるということだ。

(評価:★3)

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