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[コメント] アクロス・ザ・ユニバース(2007/米)

積極的に悪い映画ではないと思うが、なんともダサいというか志が低いというか。要するに、この映画が目指しているのは「観客の知識に頼った面白さ」であるということ。それは観客に対する阿りであり、「映画ならではの面白さ」では断じてない。心おどるダンスシーンがないことも不満だ。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ビートルズの歌詞やエピソードが多く物語そのものあるいは台詞に織り込まれており、またそれがこの映画の主たるモティヴェイションともなっているのだが、それらのほとんどは「あ、うまいこと織り込んだね」以上の面白さを獲得していない。“I Want You (She's So Heavy)”の使い方なんて確かにうまい、なーるほど、とは思うけれども、それは大喜利的というか座布団一枚進呈してあげたくなるようなうまさであって、映画的なうまさでは決してない。ストロベリー・レコードの屋上で行われるライヴにも「ビートルズをなぞっている」(と了解できる観客の知識に頼った/知識を刺激する面白さ)以上の面白さがあっただろうか。ビートルズをなぞって屋上ライヴシーンを盛り込むこと自体が問題なのではない。「映画」はそのような「お遊び」を排除しない。ただしそこで映画が行うべきはあくまでも「屋上ライヴ」という画の面白さやそこにおけるキャラクタのエモーションを追求することではないのか。しかしそれが行われているようには私には思えなかった。

同様の例はいくらでもある。黒人ギタリストのマーティン・ルーサー・マッコイジミ・ヘンドリックスのような格好をさせる、ジョー・アンダーソンの演じる「マックス」が「ハンマーが云々」と云われる――しかしそれがいったいなんだというのだろう。真の「映画」の面白さは観客の知識量に左右される類のものではない。ましてや「映画」は大喜利でもない。

テイモアが作り上げた、本人は鮮烈だと思い込んでいるであろうイメージ群も私には多く貧困なものに見える。しかしマーク・フリードバーグはここでも興味深い仕事をしている。ヴォーカル・リレー/コーラスワークなど楽曲のアレンジメントもまずくないと思う。

(評価:★3)

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