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[コメント] ヤクザタクシー(1994/日)

連作『勝手にしやがれ!!』に連なる楽園世界に思わず笑みがこぼれるけれども、キャストの貧しさは否めない。積極的によかった俳優を挙げれば、豊原功補諏訪太朗寺島進上田耕一となるが、彼らが現在でも商業映画の舞台でバリバリ活躍している面々であるというのは偶然でも先入見でもないだろう。
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しかしながら撮影喜久村徳章・美術丸尾知行という九〇年代の黒沢清作品を支えることになるスタッフの陣容に見劣りはない。長篇作品に限定して云えば、黒沢の画面モードは明白にこの映画(Vシネマだけど)で画期され、『CURE』などの私たちに馴染み深い傑作群へと続く道筋を描いている(『地獄の警備員』は屋内撮影が貫かれているという点でこの文脈上に配置できない特殊な作品で、また過渡期の作と云うにふさわしいのは一九九二年のTV作品『よろこびの渦巻』であるというのが私見です)。

タクシー会社のオフィス、とは名ばかりの、廃工場か倉庫でしかないガランとした空間。敵役・河東燈士(『CURE』の精神科医!)の情婦となった森崎めぐみと豊原の感情がぶつかり合うシーンにおける装置の使い方。続く野原での手形争奪戦におけるアクションのキレ。以降の黒沢のトレードマークは随所に溢れているが、その反-心理主義的な人物造型がこのように能天気な陽性のプロットに適用されると映画はここまでハッピーになるという例証的作品でもある。

(評価:★4)

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