原作の小説は、小説が映像のない文字のみの情報であることを利用して、読んでいる側に思い込みを植えつけて、最後にそれをひっくり返す、という話。もしこれを映像にしたら、最初からドルジが名乗る「川崎」と過去の「川崎」の顔が一緒だってことがすぐわかっちゃうじゃん。だからって過去部分を全部後ろに持ってくるわけにはいかないだろうしなあ、一体そのへんどうやって撮るんだよ、って思ってたわけですよ。

で、見てみたら現在の「川崎」がドルジだとはっきりするまでは、過去のものも全部瑛太を「川崎」にして撮ってるの。なるほどこういう手があったか！と思いました。いやでも多分ちょっと察しのいい人は容易に想像できたんだろうな。そういう意味では察しの悪いが為にたいていの事を楽しめる自分はちょっと得だなと思ったり思わなかったり。

小説が原作の映画でがっかりしなかった珍しい作品。