[コメント] その場所に女ありて(1962/日)
予定調和的ながら当時の雰囲気を要所で押さえた良質のドラマ。
最も柔らかい職場と思われる広告代理店が舞台だが、そこで描かれるヒロイン(司葉子)像は男性目線によって形作られたキャリアウーマン黎明期のそれであり、物語はあらかじめ予定されていた地点に収束する。ヒロイン自身もまたそうなるであろうことを「最初から知っている」。
男社会における女の居場所をピンポイントするというテーマにおいて、競争相手の営業マンである宝田明に恋愛感情を持つというプロットは、頭脳明晰で女の武器を使わず、男と互角に渡り合いたいとする司の生理からしたら違うだろ、との思いもあり。性によろめく職業倫理、そのツメの甘さは現代女性観客の批判を浴びたとしても不思議ではない。
営業部にあって一般職のゆうこの男言葉は、脚本段階で男性人物として書かれたかのような、いい意味での違和感あり。他の女性キャラは、男に貢ぐか、さもなくば社内貸し金業に精を出しており、『赤線地帯』の時代と進歩がなくて、現代と比べると隔世の感がある。
宣伝広告の題材から窺い知れる社会風俗や、60年代前半の銀座の町並み、オフィスの様子がカラーで楽しめるのも魅力である。
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