コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 二百三高地(1980/日)

戦争映画に安っぽい愛国ロマンチシズムや人情話が求められていなかった時代だからこそ生まれ得た、最高峰の戦争映画。
パグのしっぽ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「国と故郷のために誇りを持って死にに行く」なんて上っ面だけの言い訳で、兵隊から司令官まで個人の意志とは無関係に集団の本能として人を巻き込む戦争という現象を、激しいながらも冷静な口調で表現した作品。人間の死をドラマ化するのではなく、きっぱりと「無駄死に」だと言い切ってしまう姿勢は、平成の大予算映画では到底実現不可能。甘ったるい調味料がかかってなくても映画が観客を呼べた時代だからこそ生まれ得た作品だろう。

この作品の容赦のなさは、あおい輝彦の扱い一つをとっても表れている。最初は優しい文学青年として登場した元アイドル俳優が、最後には敵の目を潰して首を絞め殺すプロ兵士になってしまうのだから。こんな描写を妻夫木草なぎを使って撮影できる監督が、今の日本映画界にいますか?

おそらくは『坂の上の雲』をベースにした脚本なのだろうけど、司馬遼太郎の戦争描写力に引けを取らない地獄絵図をCG抜きで再現したというだけでも、偉大な作品だと思う。キャストのレベルも含めて、この水準の戦争映画に今後出会うことはあるのだろうか。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。