生涯で最も恐れ慄き現在もトラウマになっている映画を選べと言われると、私は間違いなく中田秀夫の『リング』を挙げていた。『シャイニング』や『サイコ』や『13日の金曜日』を押しのけてである。何が怖いって、呪いのビデオの映像が怖い。なぜか分からないが、怖い。一週間後と言わず、目にした瞬間に私の心臓を止めてしまうほどの恐怖を、あの映像は小学生の私の胸に刻んだのである。恥ずかしながら本当にトラウマになっているので、『リング』は小学生の頃に初めて見て以来、一度も見ていない。

そんな私が何も知らずにこの『田園に死す』を鑑賞して、喉から内臓という内臓全てが飛び出しそうなほど恐怖した事実については、もはやここでは語るまい。それでも最後まで鑑賞できたのは、私が多少とも大人になったことの表れだろう。あのラストシーン、新宿の明るい日差しが目に飛び込んできたとき、私の脳内に生まれた感情は「驚き」でも「感動」でもなく、「安堵」であった。