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[コメント] アリス・イン・ワンダーランド(2010/米)

積み上げたものをドーンと突き崩して、「どうだ?」という顔をされても反感を持つだけ。突き崩すならそれだけの理由というか描写が必要である。
Master

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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3Dにこだわって作った作品ではないとの事だったので、2Dで鑑賞。幾つか3Dで見たら面白いだろうと思うシーンはあったが、そのレベルである。『アバター』とは異なり、3Dでなければという話は出ないと思う。

本作を全体的に評価するなら、悪くはない作品だと思う。仮想世界での成長を現実世界での成長にリンクさせるという語り口も特に気にはならなかったし、それぞれのキャラクターも魅力あるものになっていたと思う。

ただ、最後の仕上げには大いに異論がある。

まず、アリス(ミア・ワシコウスカ)が父親の事業を買い取った実業者に対して、事業展開に対する意見を述べているところ。アリスは「そういう事業をしていた人の娘」という「覚醒」は描かれているが、「そういう能力がある人物」という描かれ方はしていない。父親の事業展開計画を寝ぼけ眼で聞いていたからそういう才覚があるというのは飛躍に過ぎるし、親が有能という事と子が有能という事は必ずしもイコールになるわけではない。成長を描くにしても、背伸びしすぎであると思う。これ以外の婚約拒否および、姉夫婦やおばに対する物言いは、ちょうど良い成長度合いと思うだけに、余計なことをやっているように感じられた。

あと、やはり赤の女王(ヘレナ・ボナム・カーター)の処理の問題がある。追放されるというのはまだしもハートのジャック(クリスビン・グローヴァー)に殺されそうになるという展開はその妥当性という観点から無理があるのではないかと思う。もちろんハートのジャックがアリスに色目を使うような描写もされているし、忠誠心も特にないというように考えることは可能な作りにはなっている。

だが、赤の女王はハートのジャックに対して、殺害を納得させられるほどの行為をしてはいないのではないか。ティム・バートンの前作『スウィーニートッド』でのラヴェット夫人(これもヘレナ・ボナム・カーターですが)の最期には明白な理由があった。それだけの説得力がない状態で「積木崩し」をやっても、不快感しか感じない。

最後の最後に最も落胆する箇所が来るだけに、あまり良い感想は喋りにくい。文中ほとんど触れなかったがマッドハッター(ジョニー・デップ)や白の女王(アン・ハサウェイ)の見所もちゃんとあるので、悪し様に罵倒するまでは行かないものの単純に面白かったでは済ませられない複雑な作品であった。

(2010.04.25 横浜ブルク13)

(評価:★3)

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