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[コメント] ブリグズビー・ベア(2017/米)

見事に作り上げられた絵空事は、無意味さバカバカしさに瓦解しそうな危うさを抱えながらも、人生の意味を教えてもくれる。創作という行為を他人事だと思わない心には、どうしたって響く映画。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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感動のうちに観終えたのだが、しばらく時間を置いて気持ちを冷ますと、ふと思った。喋るクマの活躍する世界を真剣に語る青年に、外の世界を知らずに育った誘拐被害者という身の上を与えたのは、本来ならもっと冷たく突き放されるであろうオタク青年の熱心さに、そうなるのが必然である生い立ちという言い訳を与えたかったのでは?と。「誘拐坊や」という話題性や、誘拐犯が何年も番組を制作し続けた異常さというアピールポイントもなく、本当に、ただ普通に育った青年が、クマがヒーローのスペースオペラへの情熱を語ったなら、もっともっと、無理解の壁を何度も突き破る試練を経なければならなかったのではないか。そこを怯まず立ち向かうドラマこそ見たかった気もする。

いわゆる「本当に悪い人が一人も出てこない」タイプの映画で、その優しい世界観は好きなんだが、誘拐犯の罪(法的なという以上に倫理的な罪)を真面目に問う姿勢がなさすぎるのは、やはりちょっと引っかかる。その誘拐犯の片割れである偽父を演じるのがマーク・ハミルというのが笑えるけど。クマ番組の作り手である彼自身、「息子」があまりにもその世界にのめり込み、考察を語る熱意に、引き気味になっている。制作者とファンの関係って、割とそんなものなのかもしれない。『スター・ウォーズ』ファンを前にして彼自身、似たような思いをしたことがあったのかも。逆に、世界中の人たちが観ていると思っていた番組を、自分しか観ていなかった、なんていうのは、オタクが世界の現実に触れた瞬間を、誇張して描いていたとも言える。

(評価:★4)

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