[コメント] 私はあなたのニグロではない(2016/米=仏=ベルギー=スイス)
「私はあなたのニグロではない」という題名の意味が分かったときの衝撃。
白人と黒人との対立は、二項対立ではないことをジェームズ・ボールドウィンは執拗に説く。 彼は、黒人の視座と白人の視座とを自由に行き来する。それは例えば「国はどこであれ白人が”自由か死を”と言えば白人は拍手喝采だ。もし黒人が同じことを言ったらどうなると?犯罪者として扱われ見せしめにされます。」という言葉に端的に表れている。 彼は、白人に黒人を見るな(ニグロはいない)黒人の視座で白人を見よ(ニグロは白人が造ったものだ)という。
この視座の反転から、映画史が語り直されるのが圧巻だ。異なる視座で映画を見直すことは、国家史を反転させる企てなのだ。
この強烈なメッセージは、同じ時・同じ場所に生きていても見えている世界が白人と黒人で異なることをテーマにした『ブラインドスポッティング』など後の映画にも引き継がれている。
そして我々も引き継ぐべきなのだ。あらゆる差別解消に有効なのは、闘争による勝利ではなく、逃走して現実を見ないことでもなく、和解でもなく、一つの視座を手放す意思なのだ。
勉強になりました。
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