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[コメント] スリーピング・ボイス 〜沈黙の叫び〜(2011/スペイン)

起きるべきでなかった内戦と、その勝者による敗者への苛烈な抑圧を、二人の姉妹を軸に描いた迫真の映画。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







内戦直後、双方が犠牲者を悼みながら、一方で独裁政権による圧制を描く。特に銃殺刑のシーンは一斉射撃ととどめの銃声は恐怖以外の何者でなかった。

その恐怖と圧制の中で、己の信ずるところを貫き、人としての誇りと人間らしさを保った姉の姿は素直に心をうつ。

そして、その姉の姿は人として生きる、その努力を最大限に発揮したものとして、一つの憧れである。自分が生きるとはどういうことか、そのことへの深い確信と覚悟抜きには、あの気高い姿はないであろう。その姿を見ることが出来たことは、心底の喜びである。

またこの映画でのキリスト教の描かれ方は非常に興味深い。スペインという国柄もあるのだろう。中世前半は国土の半分近くをイスラム教勢力に支配され、それをキリスト教勢力によるレコンキスタによって取り戻したという歴史故か、スペインにおけるキリスト教の位置は他のヨーロッパ諸国と比べても、独特のものがあるかもしれない。

それがフランコ独裁政権と結びつい時、その姿は醜悪なものではなかったか。この点は宗教について考える上でも中々に興味深いことでもある。

(評価:★5)

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