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[コメント] 英雄の証明(2011/英)

シェイクスピア劇の生命力の証明とも言える。普遍性に富んだ寓意は、いかなる時代のいかなる出来事にもなぞらえることができ、いつ見てもタイムリーにみえる。
シーチキン

凱旋後のコリオレイナスの傲岸不遜な振舞いは、まるで「選挙に勝ったから何をしてもいい」とのたまうどこぞの知事だか市長だかの様にも見えるし、英雄の些細な欠点をことさらとり上げて追放するローマ市民の姿は、今の日本の国民の姿か。

まるで今の日本を狙ったかのような映画化だが、もちろん偶然なのだろう。しかしそれでも、現代日本の縮図を見ているようで実に興味深かった。

騎馬と剣を戦車とライフルに変えても、基本は古代ローマ帝国だから政争、政変はいささかつらいものがあったがそれでも、現代の風刺として立派に通用するのがすごい。それにいかにもな時代がかった台詞回しも慣れてしまえば一つ一つが味わい深い。

演出ではTVニュースの使い方も上手い。現代に置き換えた利点は、戦闘シーンの迫力と盛り上げだけでなく、狂言回しも洗練されたものへと変えており、シェイクスピアの土台を上手にいかした置き換えだと思う。

あと、妻を演じたジェシカ・チャステインも良かったが、母親を演じたヴァネッサ・レッドグレイヴは抜群。彼女一人でも作品の風格を一つ上に押し上げていると思う。

(評価:★4)

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