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[コメント] 太陽の帝国(1987/米)

昔観たときは不満点が多かったのだけれど、今回観て評価が上がった。1987年に中国で映画を撮る事の意味を考えた時に内容が相当制限されるのは見えていた。
t3b

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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ベルトルッチがラストエンペラーで描いていた内容だってメロドラマが中心で日本が中国へ如何に進出したかという事等では無いし。

スピルバーグやベルトルッチに私は中国人民の話を描けると思わないしやらなくて良い。中国を知っていればあんな混沌そのものを映画で表現するのは無理だという事はすぐわかる筈。だから断片をうまく切り取るレベルのものが出れば素晴らしいとは逆に思う。それさえ凄まじく困難なので絵空事のような戦乱の話と只の政治宣伝、全く関係無いカンフーが量産されるのだと思う。ただ、困難でも中国の歴史映画を作るべきなのだ。この映画は産業的、政治的に成立するハリウッドの中国歴史映画として考えられていると思う。だから上海租界と収容所がお題でそこで完結させている。

中国の歴史を描くことが如何に困難かは途上国に行った事があれば理解出来ると思うがそういった地域では理詰めでは事は進まない。彼らの考える方法で物事は進む。非効率や理不尽であっても。それが彼らの昔からの歴史を考えると合理的だから。中国はそういった国自体の長い歴史から現代が逃れられないところがある。そういったものは物語になり難い。日本が進出する前から欧米が利権を求めて進出し、領土を分け合い既に乱世だった。

スピルバーグはこの映画で自分のファンタジー内で映画を操作している事を映像で明確に示しているし、そのファンタジーの表現内容はかなりのものだと思う。戦争とファンタジーの折衷と捕らえるべきでそれを評価したくない人がいるのは理解出来る。

*DVD特典を観ると原作者は本当にあの環境を一種楽しめていた部分があるようだ。異常状況を楽しむというのは理解出来るし、戦争後に記憶から消し去りたかったのも、それでも記憶が残るのも理解出来る。日本軍は男性には容赦無い暴力があったが女性、子供には乱暴をしなかった等現場ならではの証言で興味深いなと思う。言質を見る限りそれなりに忠実に再現されている部分もあるのだろう。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)Orpheus 直人[*] sawa:38[*]

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