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[コメント] 世界の涯てに(1937/独)

19世紀半ばのロンドンを舞台として始まり、登場人物は全員英国人の設定だと思うが、全員がドイツ語を話すという映画だ。
ゑぎ

 開巻は、アルバートとデブ公(翻訳字幕のまゝ)とのビリヤードの場面。アルバートは貧乏貴族で軍人、デブ公は平民だが、親がチーズ成金、とのこと。建物の外で、劇場に、裸同然の女優がいることをアジる演説シーンがあり、続いて劇場内に繋ぎ、グロリア−ツァラー・レアンダーの歌唱シーンとなる。低い声。ルックスも歌声もガルボみたい。それと肌の綺麗なこと(彼女の肌への繊細な照明は、全編徹底されている)。歌はアルバートが作った歌で、グロリアとアルバートは恋仲だ。

 アルバートは、オーストラリアのシドニーへの赴任が決まっており、その前に借金(615ポンド)を返済しないといけないという状況なのだが、デブ公からもらった、15ポンドの小切手に、勝っ手に数字(6)を追記してしまう。彼の出国後、この犯罪がばれてしまうのだが、グロリア−レアンダーが恋人のために罪をかぶる、という展開だ。

 公判のシーンも見応え十分だ。裁判所の門前で「パラマッタの歌」を唄う女がいる(パラマッタ刑務所というオーストラリアの流刑地の歌だ)。格子のある窓の外から撮った公判風景が導入カットで、窓の演出家サークらしさが出ている。結局、グロリアには、7年間のパラマッタ刑務所への流刑という判決がくだる。かくして、中盤以降は、オーストラリア(邦題の「世界の涯て」)を舞台に展開する大メロドラマになる。

 オーストラリアのシーンは、ハリウッド映画の開拓時代モノのようだ。刑務所の横には鐘楼のある教会がある。グロリアら女囚の描写と共に、牧場主?のヘンリーや、その叔父さん夫婦、あるいは軍人としてのアルバートの様子などが、パラレルで(クロスカッティングで)挿入される。アルバートは中尉だが、総督に見込まれ、その娘も彼に首ったけで、今度、副総督で少佐、という地位への昇進が約束されている、という状況だ。

 一方、植民地の人口政策の一環で、パラマッタ刑務所の女囚は、結婚すると釈放されるというルールがあり、定期的に一般男性との集団見合いが行われる。これでもってグロリアは、ヘンリーに見染められるのだ。馬車でヘンリーの牧場へ向かう途中でグロリアは、出所するためにあなたを利用した、ということを正直に打ち明け、馬車馬に鞭を入れ、馬車を疾走させるのだが、こゝはホントに西部劇みたいだと思った。

 この後のグロリアとアルバートの運命については、もう記載しないでおこうと思うが、ハリウッド期のダグラス・サークのどのメロドラマよりも、メロドラマらしいのではないかと思えて来る作品だ。終盤の、オーストラリアではめったに降らないという豪雨の造型も凄いものがある。エンディングは都合良すぎる感もするが、ちょっと洒落たところもある、落ち着きの良い収束。ハリウッドで大成した才能が納得できる。

(評価:★3)

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