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[コメント] 他人の顔(1966/日)

これは演劇的な演出に終始し、スペクタキュラーな画面作り、という部分で物足りなく思う。それは、医師−平幹二朗、患者−仲代達矢、その妻−京マチ子を主要人物として展開されるメインのプロットのことを指している。
ゑぎ

 最後までプロットが交錯しない、顔の右側にケロイドのある女性−入江美樹の挿話がメインであれば、もっと映画的になっていたかも知れない、などとも考えてしまう。入江は、土手のようなところを歩くカットで登場し、精神病院の庭や、終盤の海辺など、広さや奥行きのある場面を導いている。

 仲代中心のパートで瞠目するのは、やっぱり病院の美術でしょうね。耳をかたどったオブジェだとか。終盤では、鼓を叩く女性が後景に映っていたりして、やっぱり演劇的に過ぎる感もいたしますが。あとは、一種の三角関係とも云える、仲代と京マチ子との情事のシーンの後、京の裸の胸がばっちり映る、お宝映像が、最高にスペクタキュラーだと云えますね。さらに、こゝから、仲代のマスクがハズレかけている状況で、会話を続ける絵面(えづら)もシュール極まりなく、劇場内笑いが起きたのだが、私はこゝも演劇的だと思いました。

 ミニマルな世界なので、脇役もあまり出てこないのだが、看護婦の岸田今日子、いつもバスローブ姿で登場するアパート管理人の千秋実、そして、その娘(かどうか、あやしいが)市原悦子の3人は、強烈なインパクトを残す。あと、2回ある、新橋ミュンヘン(ビアホール)のシーンで出て来る前田美波里(17歳頃)も、筋には全然絡まないが鮮烈。ドイツ語の歌を唄う。

#備忘でその他の配役等を記述。

・仲代の会社の専務に岡田英次。その秘書は村松英子。アパートから出て来て仲代にからむ婦人は南美江

・精神病院のシーンの患者役には田中邦衛矢野宣がいる。ワンシーンのみ。

・マスクの原型の顔は井川比佐志。平幹二朗の病院の患者役で観世栄夫

・新橋ミュンヘンの最初のシーンでは、武満徹が客の役で映っている。

・京マチ子の科白はスクリプトとしては標準語なのに、度々、関西弁のイントネーションで喋られる。これも面白い、というか、待ち構えるようになる。

(評価:★3)

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