[コメント] アイヌモシリ(2020/日)
というか、字幕等は出ないが、数か月前に時間は遡って、カントとその周辺の生活が描かれ、この冒頭へ戻って来る構成だ。最近は本当にこういう構成が多い。本作も別に時系列に繋げばいいのに、と思うのだが。
さて、カントは、阿寒湖畔で土産物屋を営む母親と二人で暮らす中学生。町の顔役のような、デポさんと呼ばれるオジサンと二人でキャンプへ行き、山中の檻に入れられている子熊の世話を頼まれる。さも二人だけの秘密、というような頼まれ方で。それが後半になって、子熊の存在は町の大人たちも知っており、尚且つ、子熊はイヨマンテの儀式で使われるのだと知る。
カントの生活描写、学校の教室や部活での様子(唐突にチャック・ベリーを演奏する!)や、観光地としての集会やイベントの描写が、淡々と繋げられる部分も興味深いし、カントと子熊を、檻を挟んで切り返すシーンもよく撮れている。しかし、やはり、カントが儀式のことを知ってしまうあたりから、かなりスリリングにもなり、期待が高まった。はたしてデポさん達の思い通り、イヨマンテを実行することができるのか。逆に、カントは子熊を守ることができるのか。その帰結は、実は私の期待通りではなかったが、それでも、なかなか懐深い着地点だと思う。霊的な存在の見せ方は納得性もある。カントが大人たちの宴会場に来て、やゝあって眠ってしまう時間の演出もいい。そしてラストカット。このカットがロングショットのまゝであることがいいのだ。ロングショットなのに、ホンモノだということが分かって、余計に感動する。タイトルの意味は「人間の住む大地」。
#学校の先生で三浦透子、記者の役でリリー・フランキーが出ている。デポさんがフランキーのことを「シャモ」と呼ぶシーンがある。
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