コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 独裁者たちのとき(2022/ベルギー=露)

冒頭、ディープフェイクやAIは使っていない、全て記録映像、というようなメッセージが出るが、これもハッタリじゃないのか?
ゑぎ

 スターリンの起床シーンから始まる。軍服を着て寝ていたのかね、と云われる。云ったのはヒトラーだったか。スターリンの横にキリストも寝ている。しきりに身体が痛いと云う。キリストの出番はこゝだけ。この最初の場面で、チャーチル、少し遅れてムッソリーニも登場するが、チャーチルは、早い段階からショットによって服が異なると思った。

 次に皆で道を歩き森へ行く場面。緩慢な動きがいい。遅さは映画の画面に力を与える。螺旋状に線の入った大木の森の威容さ。このあたりから、複数のチャーチル、ヒトラー、スターリン、ムッソリーニが出現し始める。異なる個体は兄弟、みたいなことを云うが、異なる時代の彼らなのだろう。大きなドアの向こうから顔を出すのはナポレオン・ボナパルトだ。

 唐突な稲光。雷鳴がとどろき、劇伴も爆音になる。クライマックスは白い石切場のような高い断崖の場面。まさに人海と云うに相応しい大群衆の表現には瞠目する。何というスペクタクル。曖昧な人々の顔顔顔。兵士や少女の顔も人海の中に登場する。一方、断崖の途中にはトイレがある。1つの大便器と離れたところに2つの小便器。ふざけている。

 チャーチルは分身が多過ぎて、いったい何人いるんだ?と云われる。これには笑った。上半身裸のムッソリーニが、なんて格好してるんだ、と云われる場面も。科白は吹き替えだと思うが、当時の彼らの言葉を採録しているのだろう(そう思わせる)。だとすれば、下世話な悪態がずいぶん多い。また、静かに収束するエンディングによって、彼らは今だ生き続けている、という恐怖を感じさせる。英語タイトル「FAIRYTALE」は反語だろう。心憎い。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。