コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] Ribbon(2021/日)

がっつりコロナ禍を背景に描いた今のところ(公開当時)数少ない映画の一つ。屋外の人々は、ほゞマスクを付けている。
ゑぎ

 主人公−のんの友人・平井−山下リオは、マスクをあまりしない性向で統一されているが、逆に主人公の家族(両親と妹)は過剰に防御志向の強い人々として描かれる。

 のんの一人暮らしの部屋へ、母、父、妹の順番で逐次訪問される場面では、母と父の描写は作劇くさい。対して、全身黒ずくめで除菌スプレーをかけまくる妹−小野花梨は怪演だ。彼女のキャラは、もっと見たいと思った。

 大学のシーンでのコロナ関連の校内放送、テレビのニュースのアナウンス、公園などの屋外シーンでも、地域の防災放送アナウンスが画面外から流れている等、こういう描写は、映画で見せられると、非日常の得体の知れない怖さが良く出ている(『1984』的な感覚というか)。

 また、のんが毒づいていたり、怒りを爆発させるシーンが、思いの外多いと感じる。そうかと思うと、素直に自省する場面もあり、これが、のん自身のパーソナリティ(ひいては、彼女の心の声)なのかなも知れないな、と錯覚?してしまわせるところがある。もちろん、そんな単純なものではないのだろうが。

 画面作りは全般に安定していて、長編映画デビュー作だからといって、演出の幼さはほとんど感じない、立派なものだと思った。例えば、冒頭近く、友人の平井とバス停で距離をとって二人突っ立っているシーンがあるが、距離があるので、ロング気味の二人のカットと、一人ずつのカットを繋ぐ。しかも坂道がよく分かる、気持ちのいい構図なのだ。全編ほとんど固定ショット。俯瞰も少なく、ドローンとか使わない、というのもいい(ちなみに岩井俊二のスタイルとは全然異なると思う)。

 ただし、渡辺大知のマスクを外させる作戦を繋げる場面での植木に隠れる演出や、平井と二人で夜の大学に入るシーケンスも、演出は緩いとは思った(守衛の存在は、この程度なら描かなくていいんじゃないか、とか)。あと、劇伴のコメディタッチ演出(パーカッションの使い方など)も緩い。

 それと、タイトルにもなっているリボンの効果は、大九明子の映画『私をくいとめて』でのイタリアへ向かう飛行機内の特殊効果を思い出す。本作ぐらいの特撮場面で、樋口真嗣を担ぎ出す必要があるのか、私には分からなかったが。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ペペロンチーノ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。