続いて包丁を持って土手を歩く芳根京子。北川景子は、登場から序中盤は聡明な造型で好感が持てるし、接見シーンも前半は謎が膨らみ期待させる。特に、芳根は凄いサイコパスというかモンスターなのかと思わせる。という感じで出だしは快調なのだ。

　そして中盤から、どんどんオカシクなっていく。特に主人公の北川のキャラが（というか「演技が」あるいは「顔が」だが）、分裂してしまうのが致命的で、一番宜しくないのが、夜、中村倫也の弁護士事務所に、無罪を主張するよう示唆しに来た場面の、大仰な演技演出だ。どうしてこんなことになってしまうのだろう。多分、北川に非は無く、全面的に監督の責任なのだと思う。終盤は、芳根もつまらなくなり、期待が裏切られる。それに、接見室のアクリル板の反射を使った、北川と芳根のキャラをシンクロさせる見せ方も、いったい何番煎じだろう。また、女優では、チョイ役だが高岡早紀と、木村佳乃も酷い。実を云うと、本作の中で一番の悪人に描かれているのは、高岡早紀ではないか、と私には思える。そんな風に描く必要もないのに、そう見えてしまっている、という点が、オカシイ、と云っている所以なのだ。

　ただし、女優に比べると男優はマシで、中村は、学生時代のフラッシュバックで胡散臭い振る舞いをするが、北川の夫の窪塚洋介と芳根を昔助けたという（当時コンビニ店員の）石田法嗣、この２人は悪くない。納得性のある造型だと思う。