もちろん、主人公はあくまでも、ちさと−高石あかりとまひろ−伊澤彩織であり、彼女たちに勝ってもらわないと困るのだが、兄弟の方も、やられたら可哀想だという気持ちにさせられた。この板挟みがイヤだなぁと思うと同時に、前作以上の豊かさにも繋がっていると思った。

　といったかたちで、どうしても前作と比べたくなってしまうのだが、上で書いた点などのパワーアップした部分もあるが、ダウンした部分も多くあると感じてしまった。まず何よりも、主人公二人の強さを我々はもう知ってしまっている、という点は大きい。前作初見の際の驚きやスリルはどうしても減衰してしまうのだ。もっと云えば、前作では、敵はヤクザ組織のプロの殺し屋だったのだ。役者としても、三元雅芸だった。親分の娘−秋谷百音だって怖かった。それが、今回の敵は、怖さがかなり下回るではないか。

　また、ちさと−高石のシューティングアクションの見せ場が減っているように思ったのだが、これも、前作初見の時の驚きと比べてしまってそう感じたのだろうか。しかし、クライマックスの廃車工場での銃撃シーンは、もうダンスみたいな感覚に思えて（至近距離で発砲しているのに弾があたらないのも含めて）楽しかったし、兄−丞威とまひろ−伊澤の肉弾戦も様式的な面白さが増している、と云っていいと思う。

　あと、高石と伊澤の緩いやりとりのシーンについては、これは高石のノリがパワーアップしたように思えた。ただし、菅田将暉にまつわる無駄話をあんなに引っ張るのはどうだろう。特に『花束みたいな恋をした』や『溺れるナイフ』についての言及は、リスペクトなのかも知れないが、私は複雑な心持ちになった。既存の映画への言及は、映画ファンにとっては嬉しい部分と、そういうイジリ方はどうかと思わせる両面があると思う。他にも、商店街の片隅で、トラとパンダの着ぐるみが喧嘩をするシーンは、もっと面白くなるかと思ったのだ。例えば、側にいた子供たちを活かすショットがもっとあれば良かったと思う。

　その他の配役だと、主人公二人のマネージャー須佐野さん−飛永翼と、死体処理班の田坂さん−水石亜飛夢について、見せ場が増えた点は良い部分だろう。さらに、新しいメンバー、田坂さんの助手のような宮内さん−中井友望がしっかりキャラ立ちしていたのも本作の良さだ。中井友望は『少女は卒業しない』でも目立っていたし、今後に期待大だ。