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[コメント] ウーマン・トーキング 私たちの選択(2022/米)

佳編。溶明前に少女の独白。これはオーチャ−ケイト・ハレットの回想モノローグだ。メインのプロットは、ほゞ丸1日のお話だが、この日から見れば、後に生まれる赤ちゃんに向かって語りかけられた独白だ。なので、本作は、オーチャの回想を映像化した映画だ。
ゑぎ

 また、本作は、横臥の映画だ。ファーストカットが、ベッドに寝ているルーニー・マーラ−オーナの俯瞰ショット。内太腿にアザがあり驚く姿。ラストカットも、ある人物が横たわっているショットなのだ。他にも、夜、玄関ポーチで寝ている女性が映って、ちょっと驚かされたりするし、ベン・ウィショー−オーガストが作成する「良いものリスト」の中の、「収穫(ハーベスト)」の項で画面化されるイメージが、収穫されたトウモロコシの入った箱の中で寝ている幼児の俯瞰ショットだったりする。この「収穫」のショットも驚きがあって好きだ。ちなみに、「良いもの(単語)リスト」を思い出せる限り、記述しておくと、収穫の他に、太陽、星、バケツ、数字、風、愛、など。

 そして、本作の舞台の大半は、納屋の2階。こゝで行われる、選ばれた女性たちによる会議風景がメインのプロットだ。最初は3家族11人が参加しいるのだが、ほどなく、フランシス・マクドーマンドの家族3人が脱落するので、2家族8人で討論される。そこに書記として参加しているのがオーガスト−ウィショーで、この9人が主要人物と云っていいだろう。実は2家族になっても、その人物関係はなかなか把握できない。姉妹でも同じ意見を持っているワケではないし、近くに座っているからと云って同じ家族とも限らないからだ。例えば、オーチャはナイチャという同世代の娘とほとんど一緒にいる(くっついている)ので、私は姉妹と思って見ていたが、途中で別家族だと分かる。また、姉妹でも、顔つきが全然違っているのは、父親が異なるということもあるのだろう。例えば、一番敬虔な(赦すことをずっと主張する)マリチェ−ジェシー・バックリーと、一人煙草を喫うメジャルが、私には姉妹には見えなかった。

 上に書いたオーナ−マーラ、マリチェ−バックリーに加え、オーナの妹で、一番過激な(好戦的な)サロメ−クレア・フォイの3人が、議論を引っ張って、なかなか一つにまとまらないのだが、それぞれの(オーナらとマリチェの)母親が上手く整理していく役割りを担っており、主要人物は全員よく描き分けられていると思う。各人の短いフラッシュバックも効果的に使われる。特に、マリチェ−バックリーの母親(入れ歯のお婆さん)が、2頭の馬車馬(愛馬)のことを語るフラッシュバックがいい。

 それと、納屋の2階の大きな窓というか、引き戸を引いた後の、屋外に向かってポッカリ空いた穴のような境界が、とてもいい画面を作っている。2階なので俯瞰仰角の高低を活かした画面造型にもつながるし、納屋の内外を異空間として見せて、緊張感のある画面を作る効果がある。納屋から出て歩いて行くマーラと納屋の2階から見送るウィショーの画面など。あと、夜、ウィショーが、南十字星に拳を突き出して、南の方角を知る、天文航法をマーラに教える屋根の上のシーンもいい。やっぱり、マーラが画面に映ると、彼女が空間を支配してしまうような力がある。マーラの表情の演技に、心揺さぶられ続けながら見た。

#ただし、国勢調査員が車で回ってくる件に関しては、私は大音量で鳴らしている有名曲の選曲が気になった。対位法にしても違和感を覚える。スリーピー・ジーンという歌詞が、映画の内容(横臥のこと!)に掛かっているので選ばれたのだと思うのだが。

#備忘。馬の名前、ルースとシェリル。

(評価:★4)

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