コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 長い見送り(1971/露)

年代的に製作国はソ連ということになるが、ウクライナ出身のキラ・ムラートワが、オデッサの映画スタジオで製作した作品だ。ロケ地もオデッサだろうか。劇中、地名は(字幕では)分からなかった。
ゑぎ

 冒頭は植物園か?花屋か?と思う。店員みたいな人が水耕栽培の話なんかをしている。こゝに高校生ぐらいの男の子サーシャとママ。花を選ぶ。次のシーンで墓地だったと分かる。サーシャのお祖父さん(ママのお父さん)の話をする。墓参のシーンだったのだ。墓地の一区画には囲いがあり、鍵が閉められるようになっている。次に列車で移動をする2人。着いた場所は、海なのか大きな川なのか、水辺に近い屋敷で、ママの友人の別荘だろうか。もっと水辺を見せればいいのに、と思っていると、この家の娘(サーシャの幼馴染か)がドアのところで髪の毛を風で乾かすショットがある。この映画、対象を全く説明的でなく、緩く無造作に繋ぐ映画なのだ。ジャンプカットも多いし、イマジナリーライン越えの切り返しなんかも自由に繋ぐ。犬を挟んだ、サーシャと先の娘のシーンが顕著だ。この別荘の場面では、アーチェリーで遊ぶシーンがあり、弓の的へのドリー前進移動な んかも挿入される。

 また、本作は、サーシャとそのママがほとんど同じぐらいの比重で描かれており、二人が主役と云っていいだろう。ママは、翻訳事務の仕事をしていて、英語の科白が何度か出て来る。夫(サーシャのパパ)とは、随分前に別れているのだろう、広いアパートの部屋(一間?)で二人暮らしだ。ママについては、同じ言葉の繰り返しが多く、郵便局で備え付けのペンが3回ぐらい転げ落ちるとか、会社のパーティの観劇シーンで、自席が他人に取られているのを3回ぐらい、引き返して抗議したりとか、何かを繰り返す演出が、ワザとつけられている。ママの正面ショットでポン寄りポン引きっぽいジャンプカットが行われたりするのも同様の主旨なのだろう。

 サーシャのシーンでは、町で女の子(従姉?)と二人の場面で、彼女の観察官のような男が近くで監視していることに腹を立て、恋人のフリをして、男に食ってかかるシーンが重要だと思う。社会(男)と個人(自分)の自由に関して真面目に言及する。しかし、手のひらを見せて、と男に云われ、手相を見られて軽くいなされる、という緩い展開で終わるのが可笑しいところだ。いや諦観の表出なのかもしれないが。

 尚、母子二人のアパートの部屋にはスライド映写機があり、様々な写真が投影されて、美しい画面を造型する。箪笥の向こうがママのテリトリーで、彼女のベットがある。箪笥のサーシャ側には、ソフィア・ローレンの写真が貼られている。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。