[コメント] 麻希のいる世界(2022/日)
浜辺を歩くのは由希(新谷ゆづみ)。浜には小屋がある。小屋から出て行く男。やゝあって、小屋から出る女の子−麻希(日高麻鈴)。振り返って由希が見る。
本作は由希の視点というか、由希に寄り添ってお話は進む。すなわち、由希のいない空間は、ほゞ画面化されない(全カットに由希が映るという意味ではない)。しかし、圧倒的に麻希の存在感は大きい。それは、由希が麻希のことを、尋常じゃないぐらいにリスペクトしているから、ということもあるが、麻希自身のキャラクターが、異様だから、という点が大きい。笑い方、視線の送り方などで、ふてぶてしいオーラを常に醸し出す。つまりは、映画的に極めて魅力たっぷりの人物なのだ。
また、主人公は由希と麻希だが、こゝに由希のことを好きな同級生の祐介(窪塚愛流)が深く絡む。この三人が(麻希だけでなく)、三者三様に異常なキャラクター造型である点は、緻密に計算されたものだろう。例えば三人共に、機嫌の悪いシーンが多いが、特に祐介は、登場から常に高圧的な口調だ。これは、怒鳴るような演技を、わざとつけられているのだ。私とて、これを嫌悪しながら見たのだが、しかし、彼の劇中最後の科白が、打って変わって、とても優しい口調なのだ。あゝこれのためのキャラクタリゼーションだったのだと合点する。
というワケで、見ている最中は、科白やキャラ造型に違和感を覚える部分もあったのだが、見終わって、なんと緻密に構成された映画だろう、という感覚が強く残る。本当は最初に書くべきだったと思うが、光の扱いと構図、カッティングについては、ほとんど間然するところのないレベルじゃないだろうか。全編、息をつめるような緊張感で画面に見入ってしまう作品だ。ラストシーン、ラストカットの演出も衝撃的だ。私としては、前作『さよならくちびる』よりもショックを受けた。
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