こゝで、走る自転車のチェーン下から撮ったカットがある。こんなアングル、初めて見た気がする。なんてこともあるが、菅田が事件現場へ踏み入れる顛末の見せ方がいい。

　また、中盤で、菅田将暉よりも小栗旬が主人公だと思わせるのが上手いと思う。この処置が一番感心した。小栗は『罪の声』の役柄を継承したかのような落ち着いた雰囲気を醸し出していて、族上がりとは思えないが、取り調べ時の上目遣い演技がいいと思った。

　菅田とFukaseの同一化、合わせ鏡モチーフも、よくあるパターンだが、上手く見せている。菅田が、初めてFukaseの顔を描く際、画面左上に卓上ミラーを配置するカット、クライマックスで、Fukaseの上に菅田が被さるカット。Fukaseのアパートの部屋も、菅田の仕事場に似ている。

　あと、新興宗教の描き方（菅田とFukaseにとっての関係性）と、アシスタントとしての松田洋治の使い方には食い足りないもどかしさが残る。ラスト、あるいは、エンドロール後の効果音の思わせぶりも、嫌らしいと思う。とは云え、松田洋治の造型も意外性があり、面白いことは面白い。この映画、全体にショッカーとしても良く出来ていて、カルト的人気が出ても不思議でないと思う。