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[コメント] 大仏さまと子供たち(1952/日)

清水宏の『蜂の巣の子供たち』は、実は三部作で、本作はパート3。開巻は、東大寺の南大門が開くカット。仏堂のティルトダウン。そして大仏のカット。本作では、ユタカ(岩本豊)は、奈良の観光ガイドになっている!
ゑぎ

 本作の岩本豊の呼び名はユタカではなく「ほうちゃん」と呼ばれる。前作までのシンチャン(久保田晋一郎)は、本作では「一雲」さんという物知りの小坊主の役。という訳で、前二作とは全く別の設定の映画なのだ。

 ほうちゃん達の観光ガイドのシーンでは、東大寺だけでなく、春日大社や興福寺など含めて、寺社、仏像の紹介が随所に入る。これが仏像のショット等非常によく撮れており、これだけで感動してしまう。

 新しく観光ガイド仲間に加わった二人の浮浪児が、客の「紙入れ」(札入れ)を盗んだことで、ほうちゃんが二人を追いかけるシーンが見事な空間描写で特記しておきたい。画面手前に橋。画面奥の道に小さく二人を見せるカット。ほうちゃんが大きな店の中を通って向こうの道へ出る、といった人を縦に動かすカットが沢山ある。フィクスも多いのだが、こゝぞ、というときには清水宏らしく回り込むような横移動もある。

 エンディングは、縁あって彫刻家の男と東京へ行くことになった、ほうちゃんが、一雲を呼び出し、耳打ちをする(科白を隠蔽する)。そして、開巻と呼応するように、東大寺の門が閉まるカットが来る。これでおしまいかと思っていると、最後の最後に、とっても愉快なカットが繋がれるのだ。耳打ちはこれだったのだと分かる仕掛けだが、本当に素晴らしい、ある種ファンタジックな、映画でしか描け得ないなオチなのである。

(評価:★4)

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