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[コメント] ノロワ(1976/仏)

冒頭シーン、波の音がでかい。カメラが浜辺を左にパンニングすると、男女が打ち上げられている。ジェラルディン・チャップリンとその弟か。男は死んでいる。海の向こうの遠くの断崖には城が見える。
ゑぎ

 続いてキカ・マーカムが、断崖の上の斜面で、女の頭を石で打ち砕くロングショット。そこにチャップリンが現れ、二人は仲間だと分る。そして、木立のカットが来て、乗馬した男女が出現する。彼らはベルナデット・ラフォン率いる海賊たち。本作は、ラフォンたちに占拠されている古城に潜入したマーカムとチャップリンが、ラフォン一味を皆殺しにしようとする映画、と云ってしまえば、まとめ過ぎか。見ている最中は、本作も何が行われているかよく分からない。そこがまた、本作の面白さだ。

 役者たちは皆、原色を取り入れた綺麗な衣装だが、特にラフォンは、最初、ピンク系のブラウスと革のパンツ、上着もピンク色のジャケットという出で立ちだ。奥に海が見える、一面にレンゲのような花が咲いている丘を、乗馬で行くロングショットなんかも、とびっきり美しい映像で、本作の撮影は多分、ロケ場所の空気のせいもあると思うが、非常にヌケの良い画面ばかりだ。それだけで、私なんかは、うっとりしながら見た。

 また、多くの死が描かれるが、殺人シーンは、どれも緩い演出だ。このあたりもリヴェットらしさだろう。その多くは刺殺だが、ほゞ出血は描かれない。そんな中で、終盤の、城の広間でチャップリンとマーカムが髑髏の口に毒を塗ったという劇をするシーケンスが一番強い画面かも知れない。後退ドリーショットが素晴らしい。さらに、ラストは、とことん演劇的になっていくが、チャップリンの寄り気味のモノクロショットを無音で何度も挿入するセンスは、映画的だ。

 あと、多くのシーンの後景で、3人のミュージシャンが、様々な楽器を演奏し、それが劇伴になる。前作『デュエル』のピアニストのような、黒子の体(てい)だと思って見ていたが、終盤で、ラフォンの娘(実の娘のようだ)だけが、不意に3人のミュージシャンの一人のパートである太鼓を叩く、という虚実の越境(黒子への接触)が描かれていて、これも面白かった。尚、タイトルの「ノロワ」は、「北西」という意味のようだ。中盤、ラフォンの科白で出て来る。

(評価:★4)

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