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[コメント] 賭博師の娘(1951/メキシコ)

旅行の用意か、男が服をトランクに詰めるショットから始まる。電球の灯りが消える。停電だ。泣く赤ちゃん。男があやす。この男はキンティン−フェルナンド・ソレル
ゑぎ

 キンティンの妻マリアがガミガミ云う。カジノの支配人のクチを蹴って、行商人になったことをなじる。カジノは詐欺のような商売、やりたくないと云うキンティン。同僚の男が来て、2人で駅へ。キンティンを乗せた汽車は出発するが、先で事故があり、戻って来る。仕方なく帰宅すると、娘が泣いていて、寝室から妻の声。同僚の男と一緒にいる。それを見て、拳銃で同僚を撃つキンティン(弾はあたらず同僚は逃げる)。妻も追い出す。思いの外、激しい気性なのだ。妻は、娘のマルタはあなたの子では無いと云いながら出て行く。

 かくしてキンティンは、子供を道路沿いの民家の玄関に捨てるのだが、次のシーンで、彼は、カジノ兼クラブ「地獄クラブ」のボスになっている、というのが、ブニュエルらしい驚きのある繋ぎだ。さらに、捨てられた娘マルタの家では、戸棚の内側から撮ったショットで、義父が酒を取り出して飲み、戸を閉めた後、しばらく暗転し、戸が開くと、若い娘がいる、これが成長したキンティンの娘マルタ−アリシア・カーロ。という風に時間を約20年飛ばしてしまう、呆気に取られる処理だ。

 さて、身体を壊したキンティンの元妻の臨終シーン。娘はあなたの子、嘘を云った、あゝ云えば娘を渡してもらえると思った。というワケで、キンティンが部下2人を連れて娘マルタを捨てた家に行くが、入れ違いにマルタは行商人で恋人のパコ−ルーベン・ロホと駆け落ちしていたという展開だ。このシーンで、マルタの育ての父親が、飲んだくれの酷いDV男だと知ったキンティンの激し方と、部下2人のレスポンスは、完全にコメディパートだ。

 こゝから、娘の行方を部下2人に捜させる、というプロットになるのだが、写真などの手掛かりも無い状況ということなのだろう、捜索は難航する。しかし、レストランでキンティンと部下2人がエラそうに他の客を追い出し、店主を困らせている場面で、偶然にも、マルタと夫パコに遭遇するのだ。勿論、キンティンもマルタもお互いの関係を理解していない、という状態だ。マルタの夫パコは、毅然とした態度でキンティンをとっちめ、キンティンはパコに恨みを持つ、という展開になる。

 そして、マルタの捜索は、マルタと一緒に育った妹(義妹)が、歌手にして欲しい、と云って地獄クラブに来ることで収束する。国中に宣伝すれば、マルタが気付いて見に来るかも、という思わくで、キンティンもOKするのだ。案の定、ショウ本番の日、マルタとパコがやって来る。しかし、パコを見止めたキンティンは、復讐を果たそうとする。キンティンとパコとの対決。さてどうなるか、ということだが、本作も唖然とするような、ある意味屈託のない結末をむかえる。実は、私は真逆のエンディングを期待していのだ。しかし、この人を食った終わり方もブニュエルらしさだと云えるだろう。本作はかなり面白い喜劇でもある。

(評価:★3)

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