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[コメント] リリス(1964/米)

クレジットバックは蜘蛛の巣と蝶のイラスト。全編に亘って、金網のある窓と、その窓越しの画面を使った網目のモチーフが横溢する。また、前半は、キム・ハンター登場シーンを筆頭に、素早いディゾルブ繋ぎが多く、ユージン・シュフタンの撮影は、仰角俯瞰のカメラポジションのきめ細かさが際立つ。
ゑぎ

 ピクニックへ行く場面でジーン・セバーグが登場すると、けっこうズーミングが使われ始め、動的なカットが増える。中盤は屋内の人物のパン・フォーカスも目立つ。画面左端に精神科医ジェームズ・パターソン、右端にウォーレン・ベイティ、中央にハンターを一番遠くに座らせたカット等。また、ピクニックシーンでの川やその水面の反映を始め、セバーグには水と光のイメージがつきまとう。祭りのシーンのラムネ売りと氷とプリズム。部屋の中の水槽等々。

 精神病院を舞台にした患者と看護人の恋愛映画。タイトルロールのセバーグは絶頂期と云っていいだろう、怖いほどに美しい。『俺たちに明日はない』の3年前のベイティとジーン・ハックマン、また『イージー・ライダー』の5年前の、ピーター・フォンダが共演しており、監督のロバート・ロッセンには遺作だ。アメリカン・ニューシネマは未だ到来しておらず、異常性愛(等と現在の感覚では簡単に云えないが)、近親相姦、ペドフィリアといったテーマはなんとも曖昧な描き方しかされない。しかし、そのあたりは逆に婉曲表現として、謎めいたムードに繋がっている。そしてロッセンとシュフタンのコンビは『ハスラー』を発展させて、より自由な視点を獲得しているように感じられる。

#祭りの場面で、騎乗し槍を持った参加者が、馬を駈けさせながら、木にひっかけたリングを槍の先に取るゲーム(試合)が描かれるのだが、ベイティの騎乗ぶりが見事で驚いた。

(評価:★4)

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