[コメント] ステキな彼女(1980/台湾)
ホウ・シャオシエンの初期作で、国民的歌手フォン・フェイフェイを主演にむかえた云わばアイドル映画だ。時代的なもの(流行)と、まだ画面造型上のこだわりが生まれていなかったのと、両方だと思うが、本作も冒頭からズーミングを連発する。
ただし、ズームの連打も、寄り過ぎないで、ニーショットやウエストショットで止まるところがまだマシだ。また、本作は、台北に始まり、フェイフェイの田舎(叔母さんが住む村)の場面を挟んで、台北に戻る、というロケーションの構成を取るのだが、村の場面では、沢山の子供達が出て来て、蝉採りなどの遊びの風景が描かれたり、木に名前を彫る「恋人の木」のシーンなど、画面奥の田畑がたいへん美しく、この辺りはシャオシェンらしい。『冬冬の夏休み』を思い出した。
アイドル映画らしく、主題歌のBGMが何度もかゝるといった部分があるし、明朗なコメディ演出も特徴的だ。中では、いきなり決闘のイメージ(なぜか、小さな山を挟んで撃ち合うカット)が挿入されるシーンはぶっ飛んでいる。あるいは、フェイフェイが乗る車は、黄色のトライアンフ(TR7)で、相手役のケニー・ビーは赤いメルセデスのオープンカーなのだが、フェイフェイの家には、赤と黄色の電話機が置いてあり、色の相似を意識させる。あるいは、フェイフェイの服を風除けにして男性2人が顔を隠して煙草に火をつける、という奇異な所作の演出があり(はっきり云って、この辺りはナンセンスな場面)、その後、背広を頭からかぶってキスをする、という隠す演出の反復なんかも、ちょっと目を引く、才気を感じさせる演出だ。尚、後半はズーミングも落ち着いてくる。
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