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[コメント] 森の石松(1957/日)

これは良く出来ている。素晴らしい時代劇的風景の連続でそれだけで現在の観客からすれば羨望の念を禁じえない。田坂勝彦は兄の具隆に比べると殆ど代表作と云えるものの無い人だが、もしかしたら具隆よりも良いのではないか。そう思わせるぐらい本作はいい。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 まず、勝新の石松は期待に違わずぴったり。とにかくよく動く。ヒロインの小野道子はこゝでも仏頂面が多くとても美しいとは云えないのだが、切ない感情が良く出ており上手い人だと感じさせる。田坂の演出もマキノを想起させるぐらい所作や表情の演出が綺麗だ。マキノを想起させる、ということで云えば、冒頭、アバンタイトル。茶摘みの風景で「あ、石さんだ」という声と共に茶畑の斜面にいっぱいの茶摘み女が現れるカット。これを見た瞬間、『鴛鴦歌合戦』の道いっぱいに広がった傘のカットを思い出した。このカットだけでも見事。さらに女優で云えば酒場の女、浜世津子、幼馴染の春風すみれ、いずれも良いディレクション。また、マキノ雅弘・1950年代版で清水次郎長を演じた小堀明男が悪役・都鳥の吉兵衛に扮するのも一興。ラスト前の石松の最期の演出も凄絶な俯瞰の画面でこゝもいい。ラスト迄お腹いっぱい楽しめるプログラムピクチャーだ。

#備忘でもう少し脇役を記す。冒頭から登場する幼馴染の七五郎は千葉登四男。春風すみれと所帯を持つ。金毘羅詣の途中、三十石船の中に中田ダイマル・ラケットがおり漫才をする。こゝでパンすると潮万太郎がいる。東西の親分の話。さらにパンして勝新石松。おなじみのかけあいになる。このシーンもいい調子。都鳥の常吉は寺島雄作。他に原聖四郎。あと、伊達三郎が顔に痣のある客人。伊達三郎は石松の眼を斬り隻眼にするというなかなか美味しい役を演じており嬉しくなる。

(評価:★4)

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