コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ベイブ(1995/豪)

幼い頃の話を思い出した。
mimiうさぎ

子供の頃、家で一頭だけ黒の和牛を飼っていた。二年に一回その牛は赤ちゃんを産む。赤ちゃん牛は、大きな瞳でぴょんぴょん飛びはね、やんちゃこの上ない。

毎日外につながれ、毛並みをブラシで整えてやる。

大きな牛は大人しく、子供の私でも簡単に触らせてくれる。けれど、子供の牛は怖がってなかなか触らせてくれない。私は、牛のブラシにリボンを付け、子牛に「クロ」という名前をつけた。祖父は、「子牛に名前を付けるものではない」といったが、可愛くて仕方のない私はどうしてもそう呼びたがった。

最初怖がっていたクロだったが、毎日毛並みを整え、エサをやるうちに、だんだん慣れてくるようになった。擦り寄って、手を舐めたりするようになったのだ。クロが手を舐めると、手はよだれでヌルヌルっとする。クロの舌はざらざらで、ちょっと痛い。ほっぺを舐められた時は、しばらくヒリヒリしていた。まだちょこっとしか頭を覗かせていない角と角の間にギリがあり、毛が渦巻き状に撒いている。そこを毛並みに沿ってなでてやると、とても嬉しそうにするのだった。

クロが生まれてから二度目の春、祖父らがクロを売る話をしていた。またこの日がやってきた。今までも何度か子牛が売られて行くのは知っていたが、ここまでなついた子牛が売られるのは哀しくて仕方がない。

「売らないで」そう頼んだが、それは聞き入れられるはずがない。牛は売られるために飼われていたのだから…。「せめて最後は見送りたい。学校が終わるまで待っていて。」その日、授業の終わるチャイムだけが待ち遠しかった。友達との挨拶もソコソコに、一生懸命走って帰った。横腹がとても痛かった。

帰ったら、クロはもういなかった。泣いて祖父を責め立てたが、祖父は「だから子牛に名前を付けたらいけないといっただろう」と言い、色褪せ汚い字で「くろ」と書いたリボンを渡してくれた。

クロは高値で売られた。成牛になるまで、牛飼いさんのところで育てられるのだ。

そんな忘れていた想い出を思い出した。「ドナドナ」を口ずさみながら、クロが運ばれていった方向を泣きながら見ていた。私にとって「ドナドナ」は特別な歌だ。他のペットが亡くなった時もなぜかこの歌が浮かんでくる。(余談)

けれど、私は牛肉を食べる。人は罪深いものだ。そう思わざるを得ない。

リボンを捨てずに手渡してくれた祖父を思うと、いくら慣れたとは言え、何年か一緒に暮らした動物を手放す事は、ホゲット氏にとっても辛い事なのではないかと思う。現実を思い仕方なく手放すものの、その都度心にぽっかり穴が空いていたと。ベイブの才能を知り、嬉々とするホゲット氏をみてそう思った。

ベイブは、そんな優しい牧場主の救いの神であるような気がしていけない。ベイブを助ける事で、心まで助けられたかのような気持ち。この映画を見て心が暖かくなるのは、そのせいではないかと思う。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (4 人)けにろん[*] [*] よだか ピロちゃんきゅ〜[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。