ノストラダムス・ブームの最後の残り火にすがろうというワケか、主人公のオヤジは最初からバカに予言者めいている。「人類の生み出したエネルギーをゴジラは憎悪しているんだ」と原発でご対面したときから決めつける。それと対立する政府側のゴジラ討伐の先頭指揮者がなぜか憎まれ役。兵器を投入してゴジラや謎の円盤を倒そうとするときも、主人公から「科学という名の人間の傲慢さ」と頭ごなしにののしられ、最期に至ってはよほどゴジラにトラウマでも有していたのか、わざわざカブリツキで周囲の制止を聞かずゴジラをご鑑賞。ライターでゴジラを挑発し一撃で葬られる有様。

そもそもこの映画のゴジラは何物なのか。「ＶＳデストロイア」で生まれた新ゴジラではないようだが…いや、出自などはどうでもいい。問題はゴジラを倒そうとする者が悪役で、ゴジラと共存（？）しようとする者が正しいかのような妙な理屈がまかり通っていたことだ。ゴジラの細胞の驚異的復元能力を人類医学に応用しようなどとするオヤジは、「傲慢な人類」のカテゴリーには入らんのかね？実際それを身をもって実験してくれた宇宙人は見事に自滅してくれたんで、オヤジは「ゴジラは我々のうちにいるんだ」などと目の前の修羅場を見ながらうろたえていた、ということか。

この映画の語られざる教訓。「ゴジラを見たら殺そうなどと思うな。万一殺されそうなときは天の裁きと諦めること」…ケッ。