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[コメント] 他人の顔(1966/日)

結局、仮面を被っても自由になることなど出来はしない。自らの存在を消して楽しもうとした男の夢は果たせず、それでもまだ男は自分を偽ろうと試みつづける。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







楳図かずおの劇画に、おのれの妻を試すために醜悪な仮面をかぶって妻に近づき、その美しさを賛美し、奉仕しながらその反応の変化を見る男の話がある。それを見たときから何となく胡散臭く感じていたのだが…人間の顔とは個体識別にそんなに役立っているものだろうか?

顔を焼かれて仮面を被った仲代達矢は妻・京マチ子の誘惑を試みるが、それは簡単に叶いすぎた。男は仮面を過信しすぎたのかもしれないが、人々は実際のところ筋肉の上に皮膚で描かれた表情にさほどの信頼をおいていないのではないか。せいぜい美しいか否かくらいだ…問題になるのは。だが醜さを苦に自殺する少女も、今ならば貯めた小金で手術して一件落着とするのが関の山だろう。

この映画に描かれた時代より、個というものの存在意義は随分希薄になっているのが現代だ。隣人の顔を覚えていなくとも生活できるのであるから。残念ながらこの作品も過去のお伽話だろう。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)山本美容室[*] いくけん

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