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[コメント] 108〜海馬五郎の復讐と冒険〜(2019/日)

松尾スズキ作品では好みの作品。オトナの寓話であり平易すぎるほどの筋立てで、実際展開は読めるもののそれは不思議に不愉快ではない。愛情というものについての皮肉な考察であり、愛に対して純粋に生きる男のどうしようもない妄想の肥大が哀しいほどだ。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







小ネタもそれぞれに微苦笑を誘うが、むしろ可笑しくも哀しいのは男の正直すぎる絶望とそこから脱出せんとする足掻きだ。それはあまりに掴むことのできない妻の行く先ゆえであり、悩み深い男の復讐心はとんでもない状況の膨らみを生んでしまう。妻が決して己への情愛を捨て去っていないことを知ったとき、すでに男の仕事はのっぴきならない段階まで進行してしまっている。

最後の目的地までたどり着こうとしていた船の甲板に立つ、男の空虚な瞳は復讐が生んでくれない満足感を物語る。このあたりはアメリカンニューシネマへの傾倒を物語るもののようだ。コメディながら遅すぎた解決の予感はあまりに苦い味を残す。もはや幸せな結末はふたりには訪れないだろう。そんな予感がなんとももどかしい。

(評価:★4)

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